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腹臥位療法

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Q&A

Q1. 腹臥位療法って何ですか?
A1. 寝たきりを作らない、いつでも、だれでも、どこでも取り組める療法です。
高齢化が進み、脳卒中や、パーキンソン病、慢性疾患にかかったあと、ベッドに寝たきりになってしまう方が増えています。腹臥位療法とは、うつ伏せになって、手のひらを下にすることにより、脳の視床下部というところに刺激を伝え、寝たきりにならないようにする療法です。神経内科有働尚子医師が 1998年に提唱しました。
Q2. どんな人が対象になるの?
A2. 脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)、パーキンソン病などにかかって、寝たきりになっている人、または、寝たきりになりそうな人。その他、高齢になるにしたがって、いろいろな慢性疾患の影響で、食べることや、排泄機能、手足の機能が衰え、人と話すことや移動することも困難になった人などです。
Q3. どんな方法ですか?
A3. 基本の体位はこんな感じです。
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ヴァリエーション1(写真1)
毎日、空腹時に15分から30分程度、写真1のような体位でベッドに寝ているだけです。慣れてくるにしたがって時間を延長しても構いません。中には、気持ちがいいので、このままの格好で寝てしまわれる方もあります。寝たきり状態が長期に及ぶ方は、何年もうつ伏せで寝たことがないので、怖いと言う方もいらっしゃるかもしれません。そんな方には、無理のない半腹臥位(写真2)から始めてみて下さい。その方の状況や体調に合わせて、こんな体位(写真3)でも行います。
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ヴァリエーション5(写真2)
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ヴァリエーション6(写真3)
Q4. どんな効果があるの?
A4. 寝たきりの予防と、寝たきりになったときにおきてくる症状を予防・改善します。
たとえば、寝たきりになれば、手足の関節が固くなったり自分から体を動かしたりすることが減ってきます。自分の首を自分で支えることもできなくなるので、ご飯を食べにくくなりますし、食物が誤って気道に入り肺炎をおこしやすくなります。背中をいつも圧迫しているので、床ずれができやすくなります。便や尿を自分でする機能も衰えてくるので便秘になったり、膀胱に尿が残って熱の原因になったりします。また、周囲への関心が薄れてきたり、意欲が低下してきます。これらの症状の予防や改善ができます。
Q5. 腹臥位になるときには、どんなことに気をつけたらいいのですか
A5. 一番心配なのは、”骨折”と”窒息”です。 長い間寝たきりになっていた人は、骨がもろくなって折れやすくなっています。腹臥位になるときに無理な力をかけないようにしてください。また、頭を自分でもちあげられない人は、窒息の危険があります。腹臥位中は、そばにいて見守ってください。 腹臥位療法を始めるときは、事前に主治医の先生や、訪問の看護師さん等に相談してください。
Q6. 今まで腹臥位療法を受けた人たちの声を聴かせてください。
A6.

☆K氏(寝たきり歴12年)

「食欲が出てきて、リハビリも頑張ろうという気になった。」

☆K氏の妻

「介護に疲れて一時は施設も考えたけれど、主人の頑張る姿を見て、また頑張る気になりました。」

☆T氏(2日に1回は浣腸をしていた)

「薬を飲んだり、浣腸をしなくても、うんこがよく出るようになった。」

☆A氏(肺炎)

「痰がよく出るようになって、息がしやすくなった。」

☆B氏(パーキンソン病)

「首がすわるようになって、腕立てふせのような格好もとれるようになったよ。」

Q7. 実践する際の注意事項などが載っているパンフレットはありますか?
A7. 腹臥位療法のしおりを作成しています。 パンフレットでは、それぞれの体位についての注意事項や、あると便利な道具の紹介などを掲載しています。

腹臥位療法推進委員会のメンバーより

私たち、加西病院の看護師は患者さんに少しでも良くなっていただきたい、「生きていて良かった」と思える日々を過ごしていただきたい、と腹臥位療法に取り組んでから早15年の歳月が流れました。

有働先生のご講演をきっかけに腹臥位療法に取り組み、さらに全国に広めたいとの思いから実践データを分析・検証して、自治体病院学会その他で発表すると共に、全国各地からの視察研修の受け入れをするなどの活動を行って参りました。

しかし、急性期病院では、じっくり腹臥位療法に取り組むという時間的余裕が少ないのも事実です。昨年の聖ルカライフサイエンス研究所主催の腹臥位療法セミナーでも、継続して取り組んでいくことの難しさが話題となっていました。当院では、新採用者の研修に取り入れたり、委員会活動を通して、腹臥位療法のもたらす効果についてエビデンスをもって広めています。腹臥位療法が技術として確立し、実践されている事を、活動を通じて実感することができます。

今後も、1人でも多くの医療者・介護者に患者さんの人間性を取り戻すきっかけとしての腹臥位療法の有効性を伝え、継承していきたいと考えています。

当院で実施している2例を紹介いたします

1.東4病棟でのケース

パーキンソン病・誤嚥性肺炎で入院された患者さん。胃瘻造設後3ヶ月経った頃に喀痰が増え、誤嚥性肺炎と診断され入院となりました。施設では、1日30回程度の喀痰吸引が必要だったそうです。腹臥位療法を実施した結果、排痰が進み,入院後8日程度で、黄色痰が灰白色痰に変化し喀痰量が減少し、炎症反応も改善しました。

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腹臥位療法の導入当初は、後頸部その他の筋固縮が強く、クッションなどを使用した半腹臥位をしていましたが、退院時にはスムーズに完全腹臥位が取れるようになりました。いつも開いていた口も閉まりやすくなり、頸部の柔軟性も増していました。顔の下にタオルを当てるように促すと、自力で頚部を持ち上げる動きができるようになりました。

2.4病棟でのケース

若年性認知症で誤嚥性肺炎を起こして入院された患者さん。入院後肺炎が悪化し人工呼吸器が装着され、10日後肺炎が改善し抜管されました。2日後には再度肺炎が悪化し、左肺野に肺炎像があり、再び急変の可能性がありました。そこで、看護師の提案で左肺を上にした半腹臥位療法を開始しました。その結果、粘稠痰の排出があり酸素飽和度が改善し呼吸状態が安定しました。腹臥位療法導入翌日のレントゲン撮影の結果は、導入前の無気肺状態から劇的に改善していました。

この患者さんを腹臥位にすることで背側の横隔膜の動きは良くなり、無気肺の改善につながりました。また腹臥位にすることにより、換気の良い腹側に血流が移動するために、換気‐血流比が改善されたものと考えています。そして、重力の関係で背側の分泌物が移動する体位ドレナージ。これらが腹臥位による酸素化改善の機序とされています。

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【腹臥位療法 前日】 【腹臥位療法 翌日】

訪問看護における腹臥位療法

当院の訪問看護ステーションでも利用者さまに腹臥位療法を実践しています。

60代男性 脳梗塞後左片麻痺、舌癌にて舌亜全摘出後、胃瘻造設をされている利用者さまです。唾液が気管内に流れ込みやすく、喀痰の排出が困難で、吸引処置が必要な方です。意欲低下、ADL低下が見られ、ベッド上仰臥位で過ごされている時間が長く、排便困難、全身の関節拘縮もあります。排痰、便秘改善、廃用予防などの効果を期待して週2回の訪問時に腹臥位療法の実践を開始しました。利用者さまの体調等により毎回はできていませんが、腹臥位療法を行った後は口腔内に溜まっていた唾液や喀痰の流出がみられ、肺炎予防につながっていると考えます。また、腹臥位療法は身体機能や認知・精神機能の改善にも期待が持てるので、今後も継続して行っていきたいと思います。現在は、訪問時にのみ行っていますが、ご家族が体位変換のひとつとして施行していただけるようになれば、さらに効果があがるのではないかと考えています。注意点などを理解して頂いた上で、ご家族が腹臥位療法に取り組んで頂けるよう指導をしていきたいと思います。

今後も腹臥位療法の適応のある利用者さまを見極め、本人、ご家族、または施設等に腹臥位療法の魅力や効果を伝え、継続して行ってもらえる関わりをしていきたいと思います。

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【半腹臥位療法】   【車椅子を活用した腹臥位療法】

視察研修のご紹介

腹臥位療法を導入して2014年で15年になり、その間64施設、224名の方が視察研修に来られました。見学後、腹臥位療法を実施してその成果をあげておられる病院もあります。見学に来られた施設の一つを紹介します。本年2014年6月12日に、兵庫のA病院から見学に来られました。

A病院から作業療法士、理学療法士、看護師など計7名が研修に来られました。腹臥位療法の歴史や当院での取り組み、事例など紹介した後、病棟で腹臥位療法の実際を見学されました。入院から導入までどれくらいか、関節拘縮の患者が多い病院だが膝関節などへの負担はどうか、などさまざまな質問が飛び交いました。当院で15年も継続出来ていることに感心されていました。各病棟を回った時、対応した当院の看護師はどのような目的で行っているか,注意していること、効果などを的確に説明でき、当院で腹臥位療法が浸透しているという事を感じることができました。

病棟視察の様子です

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腹臥位療法講師派遣中

近隣の施設、病院へ腹臥位療法の講師を派遣し指導をおこなっています。

講師派遣を希望される方は、加西病院の腹臥位療法推進委員会の織邊までご連絡ください。