市立加西病院
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病院事業管理者からの報告

平成29年4月1日
病院事業管理者  山邊 裕

Ⅰ.はじめに

病院事業管理者として医療提供の維持に努めてまいりました目に映る我が国の社会・制度・人は、加速しながら変化してゆく感を深くしています。特に昨今、社会環境の変化とそれに対処しようとする制度変化の大きさには圧倒されるほどです。

診療報酬改訂は中小規模の病院にとって厳しくなるばかりですが、一方で国民の社会保障費を将来世代につけ回ししないと維持できない国家財政の悲鳴が聞こえてくるような気がします。病院も変革なしに生き延びることは困難です。進化論が言うところの『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。変化できる者だけが生き残る。』を実感します。

Ⅱ.社会と医療について思うこと

(1)社会の変化

病院を通して見える日本社会の変化の基層には、貧困の拡大、分断された家庭・人間関係、それらがもたらす生きる不安や他者への共感の希薄化があるように感じます。貧困の影響は、体調悪化で受診し重大な病気が懸念されるのに、必要な検査や治療を拒否して安価な薬で症状を抑えることを希望する受療スタイルに現れています。一方で、健康や生きることへの不安を共感してくれる家族・友人の欠如がドクターショッピングを惹き起していると感じます。共感の希薄化は、医療現場においては患者さんに手掛けた労力の大きさよりも些細な齟齬によって評価される困難として現れます。

高齢化は日本社会を席巻する最強の潮流です。身体機能の低下や認知症の併存が増え、病気自体よりも周辺の問題がより大きなウエイトを占めがちです。一旦病を得ると自立が損なわれ、急性期治療が終っても在宅へ移る家族力が無く、落ち着き先がなかなか決まりません。結果、急性期病床が占有され、新規の患者さんの受け入れを制限します。

(2)医療制度改革

国の医療制度改革の大きな目標の一つが、増え続ける社会保障費の抑制であることは、国自身が明言しています。その施策のビジョンは二つあります。一つは終末期を含む在宅医療の促進です。もう一つは病院医療の機能再編です。平成26年に成立した「医療介護総合確保推進法」もこの二つの制度改革を根幹に据えています。

それを実地に移すために提唱されたのが地域包括ケアシステムであり、あるいは地域医療構想です。しかしこれらの進捗ははかばかしくありません。結局、国の伝家の宝刀である診療報酬改訂により、入院病棟の看護師配置を手厚い7対1から10対1や地域包括ケアに移行させるよう、今年の改訂で基準が厳格化されました。現在、加西病院は7対1が4病棟、地域包括ケアが1病棟です。7対1は手厚い病棟体制でありますが、患者さんが高齢化する中でもはや安全に医療する標準体制ともなっています。これを削減すれば、重症に陥り易い高齢の患者さんの受け入れに難渋する事態が増えます。結果、安定した患者さんを地域で診ておられる診療所の先生にも、急変時に迷惑をおかけすることになります。

これらの問題に対し、加西病院は可能な限り手厚い人員体制を維持できるよう、昨年度は地域包括ケア病棟を一つ開設しました。地域医療室と訪問看護ステーションが病院と地域の患者さんや診療所を積極的につないでいます。急性期から在宅医療まで、地域の先生方と連携して切れ目ない医療を提供する努力を行っています。

Ⅲ.加西病院の活動紹介

(1)市民に開かれた病院

市民に開かれた病院をテーマに数々の取り組みを行っています。市民と職員が交流する『ホスピタル・フェア』は、昨年第13回を開催しました。多くの市民にお越し頂き、ボランティアでホスト役を務める病院職員や看護学生や救急隊員が市民と相互理解を深めました。

10年前より市民との対話集会である『加西病院市民フォーラム』を毎年開催しています。3年前からより多くの市民に参加いただこうと市役所が音頭をとり、名称を「地域医療フォーラム」と変え昨年第3回を開催しました。今回は増加する高齢者の生活の拠り所となると国が力をいれている「地域包括ケアシステム」を取り上げました。加西市の取り組みは決して進んでいるとは言えない状況で、問題点や課題が議論されました。

市内中高校生に看護の使命と遣り甲斐を伝える『看護の日体験実習』や中学生の『トライヤルウィーク』、患者家族に向けた『きらりコーラスコンサート』、患者満足度アンケート調査、みなさまの声への返答開示、健康講演、『チョイ耳待合広場』、広報かさいの病院コーナーへのコラム連載、かさい病院だよりの全戸配布など沢山の交流と情報発信を行なっています。

一般市民向けではありませんが、市内外の病院や介護施設で働く職員の方々を集めて、毎年加西病院が中心になって『加西市感染防止ネットワーク』を開催しています。昨年は「夏季感染症と消毒薬の使い方」の講演会を行い、多数の方々が参加しました。平時に施設の感染で困られたときの個別相談にも応じています。感染は人の命を奪う恐ろしい病気であり、しかも100%の防御は不可能ですが、正しい対応で減らすことができる病気です。

突然心臓が働かなくなり、一瞬のうちに処置の開始か否かが生命を決める心肺停止という病状があります。これが院内で起こった場合、現場にいる職員が適切に対応できる訓練をICLSと呼び、院内の様々な職種の職員を対象に開催しています。3年前年より、その市民版であるBSLを市内小学校や中学校で教える取り組みを行っています

写真 ホスピタルフェア
ホスピタルフェア
写真 地域医療フォーラム
市民フォーラム
写真 きらりコンサート
きらりコンサート
写真 チョイ耳待合広場
チョイ耳待合広場
写真 BLS講習会
BLS講習会
 

(2)チーム医療

チーム医療という言葉は、医師や看護師や技師など専門の異なる職種が協力して一人の患者さんを治療するというニュアンスがあります。そのような医療者間のチームワークは医療が円滑に進む上で本質的に重要です。加西病院ではそのための風通しのよい組織文化の醸成に力を入れています。

一方『チーム医療』が固有の医療活動を指す場合があります。例えば、栄養管理チーム(NST)は栄養状態が悪い患者さんや必要なカロリーを摂取出来ない患者さんに、様々な栄養摂取の方策を立てます。感染管理チーム(ICT)は微生物の感染で発熱や衰弱を起こしている患者さんに、原因菌を特定し効果的な薬の使用を提案します。それと共に、院内に集団感染(アウトブレイク)が起こらないよう監視と防御対策を行っています。リスクマネージメントチームは医療安全をテーマに、患者さんにとっても医療者にとっても安心して医療が行える体制作りに邁進しています。呼吸管理サポートチーム(RST)は人工呼吸装置を装着された患者さんの呼吸状態が最良になるよう検討して担当医と相談します。少しでも早く人工呼吸器から離脱できるよう工夫しています。緩和ケアチームは、癌で痛みなどの苦痛に悩む患者さんが少しでも楽に過ごせるよう、薬剤的、環境的、精神的支援を話し合い提供します。糖尿病管理チームや褥瘡管理チームも職種の異なるメンバーが揃って患者さんの治療管理に当たります。

写真 栄養管理チーム
栄養管理チーム
写真 感染管理チーム
感染管理チーム
写真 呼吸管理サポートチーム
呼吸管理サポートチーム
写真 緩和ケアチーム
緩和ケアチーム

(3)研修医

研修医が集まるか否かは、病院の教育熱意のバロメーターと言えます。加西病院は研修病院として教育体制の充実に取り組んできました。今年度は、初期臨床研修医が1年目2年目で全10名です。当院の教育熱意が評価された結果と考え喜んでいます。これらの研修医の方々が臨床力を身につけられるよう最大限力を尽したいと思っています。

写真 初期研修医
初期研修医

(4)訪問看護ステーション

写真 訪問看護ステーション
訪問看護ステーション

超高齢化社会を迎え、病院も数々の影響を受けています。その一つに、急性期の治療が終わった後、慢性期の医療を行う場に行けない・自宅に戻れない患者さんが増えているという問題があります。加西病院では地域医療室がスムースな後方連携を支えてきました。しかし今後更なる高齢化の高まりを受けて、一層注力しなければ病気になった住民の生活を支えてゆくことができなくなると危惧しています。

さらに難しい問題として在宅での終末期医療があります。自宅で最期を迎えるつもりで在宅療養していても、最期の瞬間の病状の変化に家族がパニックになり、救急隊に通報します。救急隊は出動して心肺停止の患者さんを覚知すれば、蘇生術を希望しない患者さんにも救命処置を行います。その結果、誰も望まないガン末期の蘇生が行われ、病院に搬送されるという事態が生じています。

このような病院からみえてくる様々な社会問題・医療問題に対処する足場として、3年前に加西病院訪問看護ステーションを立ち上げました。小規模なステーションであり、かかりつけ医の先生や他の訪問看護施設の協力があって成り立っている活動ですが、組織は小さくとも地域医療の核心にチャレンジする心意気をもって活動しています。

(5)マタニティセンター

写真 おやこで体操
おやこで体操

北播磨圏では子供を産める公立公的病院が減り、本院を含め3病院になってしまいました。加西病院では3名体制で分娩医療に取り組んでいます。分娩という365日24時間の緊急対応を必要とする医療には3名の医師でも不足はありますが、医師とマタニティセンターの助産師スタッフの協力に加え、常勤の小児科医により加西市の成育医療を支えています。

地域で子供を産み育てることのできる病院を持つことが加西市にとってどれほど大切か、市民、行政、議会の方々にご理解いただいているお蔭です。センターは陣痛から分娩まで明るい個室の環境で過ごして頂けるよう改装しました。本院のマタニティーセンターによって加西市の子供が増えることを願っています。

(6)院内みつばち保育園

写真 みつばち保育園
みつばち保育園

院内に設置した、働く医療者の支援事業である“みつばち保育園”が好評です。夜の9時まで延長がきく余裕ある時間帯設定により、夜間遅くまで働く医療者にとって利用し易く、女性にとって優しい職場を実現しています。夜間や休日でも働く女性医師や女性看護師、職員全体の支援体制に大きな役割を果たしています。

働く女性職員から好評で利用希望者が増加し、拡大を続けています。また病児病後児保育は、一昨年から市内のさかいこどもクリニックに併設した「たんぽぽ病児病後児保育室」を利用させていただいています。医療者が子供の病気で現場から脱落し、患者さんへの医療が不足する危険を防いでいます。

Ⅳ.今年の加西病院の目標

今年は病院目標を『力を合わせて価値ある病院づくりに取り組もう!』と定めました。超高齢化と成熟先進社会の様々な改革局面を迎え、医療制度と地域医療の内実が大きく変わろうとする今、当院がこの地において求められる役割を果たし、院内の充実に取り組み、市民に信頼され、職員にとって働き甲斐のある病院に向けて進んで行きたいと考えています。

Ⅴ.市民の皆様に感謝

(1)みなさまの声

市立加西病院は市民への医療の確保を使命としています。病院の医療が市民に評価されてこそ価値づけられます。病院内に設置された御意見箱「みなさまの声」に寄せられた多くのお褒めの言葉は病院職員を勇気づけてくれます。

(2)ご寄付やボランティアに感謝

昨年度もまた、有志の方々や団体の皆様から奉仕活動やご寄付の暖かいご支援をいただきました。これらのご厚意に対し感謝申し上げます。

案内業務の個人様、おしぼり巻きタオル巻きの個人様、コーラスグループ「きらり」の指導とコンサート参加の個人様、連合婦人会様、福友会様、天理教様、容真流いけばな東播支部様、裁縫ボランティアたんぽぽ様、輪来の会様です。お礼申し上げます。

加西病院は市民の方々の有形無形の支援で成り立っています。もっともっと市民の皆様の助けを請いたいのが実情です。これからも暖かいご支援やご協力をお待ちしています。